あなたのブランド、思い出されてますか?カテゴリーエントリーポイントを噛み砕いて理解したい人のための情報
2025.02.26
最終更新日:
2025/02/26

「カテゴリーエントリーポイント」という言葉は、聞いたことはあって、さらにわかった気になっているようで、実際のところ実務にどう落とし込んでいったらいいか戸惑う方も多いのではないでしょうか?
なるべく噛み砕きながら、ピンとくるための理解のとっかかりとなるような情報をまとめてみました。
(厳密に正確に理解したい方は、『ブランディングの科学 新市場開拓篇 -エビデンスに基づいたブランド成長の新法則-』や論文をご覧くださいませ。本記事はあくまで理解のとっかかりを作ることを目的としているためです)
カテゴリーエントリーポイントとは
まず前提として、通常、人は何かしらのきっかけがあって
「どんな選択肢があるっけ」「どんなレパートリーがあるっけ」
という風に考えてブランドを選ぶという意思決定メカニズムがあります。
なので、いかにその候補に食い込んでいけるかが重要になります。
結局、何かきっかけがあった時に思い出されないと選ばれないので、思い出されるきっかけを増やしていきましょうという話になるんですよね。
その上で用語の説明です。
カテゴリーエントリーポイントとは、
消費者が日常生活のなかでブランドやブランド群、製品カテゴリーを想起する入口となるポイントのことです。
広告・マーケティング業界で話題を呼んだ
『ブランディングの科学 誰も知らないマーケティングの法則11』の続編の『ブランディングの科学 新市場開拓篇 -エビデンスに基づいたブランド成長の新法則-』にて、
「カテゴリーエントリーポイント(CEP)はブランドとつながっている道の入口だ。カテゴリーエントリーポイントが多ければこの道も多くなり、ブランドが目立つ機会が増える」
と説明されています。
売上を上げるには、浸透率を高めるかロイヤリティを高めるかなどの切り口がありますが、消費者に自社ブランドを選んでもらう確率を高めるために役立つ考え方が、このカテゴリーエントリーポイントです。
カテゴリーエントリーポイントの例
さて、みなさんはどんな時に「長万部旅行」を思い浮かべますか?
そもそも長万部ってどこ?って思った方、正解です。(室谷の地元です)
では、「京都旅行」はどんな時に想起するでしょうか。
「秋だし紅葉を見に行きたいな」とか「修学旅行だったら京都だな」とか、色々ありますよね。
これがカテゴリーエントリーポイントの差です!!!!!!!!
もしも長万部を観光地としてブランディングしていくならば、やるべきことがたくさんあることが明快です。
長万部は、カテゴリーエントリーポイントがないから、具体的なシーンやシチュエーションが想起されないんですよね。
あるとしたら、住民がお盆や年末に「そろそろ帰ろうかな」と思うかもしれません。
私が長万部町出身者の一人として無理やりひねり出すなら、「何もない街で、2泊3日くらいでしっかり内省したいな」とか、長万部のイメージキャラクターである「まんべくん」のファンが居て聖地巡礼しようとか、10年後に新幹線が開通するから新幹線停車関連の街づくりに興味のある人が視察にくる、などあるかもしれません。
長万部以外のもっと身近な事例
わかりやすいようにさらに例を挙げます。
漠然とした理解の際には、まずは大量に例をインプットするのがおすすめです。
乳酸菌飲料カテゴリの例:
・お腹の調子が悪いな→乳酸菌飲料を飲もう→このブランドにしよう
・免疫が弱ってると感じる→乳酸菌飲料を飲もう→このブランドにしよう
・身体に優しい甘い飲み物がほしい→乳酸菌飲料を飲もう→このブランドにしよう
カフェカテゴリの例:
・美味しいコーヒーを飲みたい→カフェにいこう→このブランドにしよう
・友だちとゆっくりおしゃべりをしたい→カフェにいこう→このブランドにしよう
・作業に集中したい→カフェにいこう→このブランドにしよう
・リモートワークで何も起きない平坦な日々に何かリフレッシュポイントがほしい→カフェにいこう→このブランドにしよう
・待ち合わせ時間までちょっと時間が空いたので時間をつぶしたい→カフェにいこう→このブランドにしよう
ほか:
・特別な日にちょっと贅沢したい →焼肉屋にいこう→このブランドにしよう
・1人だが、がっつり肉を食べたい→焼肉屋にいこう→このブランドにしよう
・仕事中に甘いものがほしい→チョコが食べたい→このブランドにしよう
・お肌の調子が悪いな→パックをしよう→このブランドにしよう
株式会社スノードームを例に挙げると、「マーケティングコンサルなら」や「マーケティング人材育成なら」「人間理解に根差した本質的なマーケをやるなら」という想起のされ方もあるかもしれません。
または、「年末年始に海外旅行に行くなら」と思った時に、ハワイが浮かぶ人が居れば、香港や韓国が思い浮かぶ人も居るということです。
人が何かを必要とする時って(≒カテゴリニーズが発生した際)、必ず何かしらのきっかけがあるんですよね。
その時に、いかに自社の商品やサービスを思い出してもらえるか。
消費者が何かを必要とする瞬間に、必要とされるブランドになること、そのためにいかに自社の商品やブランドを思い出してもらえるかが大切になります。
ブランドとひもづくカテゴリーエントリーポイントの数が多いほど購買顧客数も多くなります。多くのシチュエーションで選ばれているからですね。カテゴリーエントリーポイントの意義は、そこなんですよね。
最近のお買い物行動で、何がカテゴリーエントリーポイントだったかを振り返ってみることも、カテゴリーエントリーポイントの考え方を訓練するいい方法です。
(気になる人だけどうぞ!)「STP」とカテゴリーエントリーポイントは違う?
「STP戦略」は、Segmentation(市場の細分化)、Targeting(ターゲット選定)、Positioning(ポジショニング)の頭文字をとったものです。あのフィリップ・コトラー先生のフレームワークです。
一方で、カテゴリーエントリーポイントは、「どのような場面でブランドが思い出されるか」という視点にフォーカスしています。
STP戦略で顧客を絞り込むことが重要だとよく言われるが、ターゲットを不用意に絞りすぎると買ってくれるお客様が少なくなってしまう可能性があります。
カテゴリーエントリーポイントの考え方は、市場を狭めるのではなく、「ブランドを思い出すきっかけを増やすことで、選ばれる機会を増やす」ことを目的としています。
(気になる人だけどうぞ!)「買う理由」とカテゴリーエントリーポイントとの違い
カテゴリーエントリーポイントは「買う理由」とイコールではありません。
「買う理由」は、商品の価値や価格が決め手になります。
一方で、カテゴリーエントリーポイントは、そもそも商品やブランドを思い出すきっかけです。
例えば、「この服は安くて質が良いから買う」が買う理由。
「結婚式用の服が必要だから、○○ブランドを見に行こう」がカテゴリーエントリーポイントです。
「買う理由」は「この価値があるから買う」「価値の割に安いから買う」といった価値とコストの要素がメインなのに対して、カテゴリーエントリーポイントは消費者が何かを買う際に、日常生活の中で何らかのシーンやシチュエーション、場面で思い出すきっかけに焦点を当てています。
強いブランドは、カテゴリーエントリーポイントが多い
多くの消費者に支持されているブランドは、さまざまなカテゴリーエントリーポイントに紐づいています。
例えばユニクロは、冬になると「ヒートテック」を思い出しますし、靴下やTシャツも「とりあえずユニクロで」と思う人が多いです。これが、カテゴリーエントリーポイントが多いブランドの特徴です。
一方、名前を知っていても、「いつ使うんだこれ」「誰の何に役立つの?」といった明確なイメージが湧かないブランドは、知られていても選ばれにくくなります。
たまに「なんだこれ」って思うテレビCMに出くわしませんか?
会社名やブランド名を最後だけにおしゃれに露出していたり、冒頭からクリエイティブとしては美しくて目を見張るけど、「いつ使うんだこれ」「誰の何に役立つの?」と思うCMが。
何か私にも洞察できない高度な戦略があるのかもしれませんが、多くのケースで広告宣伝費の浪費だと思います。
水道が壊れた時、“あのCMのあの曲”が頭に流れてきませんか?
あれはすごくいいケースですよね。印象的なCMソングで、水道が壊れた時に思い出してもらえるように、その場面に自社のブランドを結びつけているわけです。
「ピアノ売ってちょーだい!」のCMや、「仕事探しはXXX♪」なども選ばれたい瞬間に選ばれるように印象づけをしていますよね。
ちゃんと商売繁盛を願って、お客様にこんな時に役立ちますよと伝わるようにされています。
利用シーンでちゃんとお客様に思い出してもらう、記憶の引き出しから取り出してもらえるように、思い出しやすい記憶として留めてもらう必要があるんです。
「○○がほしい」と思ったときに、思い浮かぶブランドでなければ、購入にはつながりません。
言われてみれば、とても当たり前の話だと思いませんか?
また、老舗ブランドがリニューアルする際には、新しいカテゴリーエントリーポイントを提案することがよくあります。
有名な例だと、森永製菓の「大粒ラムネ」。ラムネが改めて、大人に注目された例です。
ラムネは、もともと「子供のおやつ」みたいなイメージだったと思います。スーパーでお菓子コーナーを見に行った時に、ラムネが目に入って、子供のお菓子として買っておこうみたいな感じでしたよね。
そこで「どうすれば大人に注目してもらえるか」と考えた時に、新しいカテゴリーエントリーポイントを提案したんだと思います。
普段リモートワークをしているデスクワーカーの私にとっても、「脳の栄養補給にラムネはどうですか?」はとても魅力的な提案です。
チョコレートでも糖分補給は可能ですが、脂質も含まれますよね。一方ラムネは、ブドウ糖は豊富でも脂質がないので、油を気にする人にはチョコレートよりも嬉しい選択肢になるからです。「仕事中の糖分補給」という新しい場面にラムネを結びつけたことで、そうなった時の選択肢に入るようになったわけです。
ミニコラム:
きっと優秀な営業パーソンは、いろんなカテゴリーエントリーポイントを思いつけるんですよね。
目の前のお客様に合わせて商品を提案できるので、いろんな場面を提示して「あ、なるほど。確かにそういった場面がありそうだから、それに備えて買っておこう」と、お客様に思ってもらえるんですよね。
カテゴリーエントリーポイントの活用の流れ
1. カテゴリーエントリーポイントをリストアップする
後述のW’sフレームワークなどを用いて、想起されるシチュエーションを洗い出す。
2. カテゴリーエントリーポイントの調査
市場規模が大きく、想起頻度の高いカテゴリーエントリーポイントを特定する。
そういうカテゴリーエントリーポイントほど売上インパクトが大きいため。
・市場規模調査:影響力の大きいカテゴリーエントリーポイントを把握
・ブランド浸透度調査:各カテゴリーエントリーポイントで想起されるブランドを分析
・競合分析:競合が獲得しているカテゴリーエントリーポイントを確認、その上で奪える領域を分析 など
3. 注力すべきカテゴリーエントリーポイントを決定
自社ブランドの成長に最適なカテゴリーエントリーポイントを選ぶ
4. 4P施策の実行
選定したカテゴリーエントリーポイントに沿ったマーケティング施策を展開
5. 効果測定
施策後、カテゴリーエントリーポイントとブランドの結びつきを定期的に評価。
詳細な調査手法については本記事では割愛。
カテゴリーエントリーポイントを見つける7つの切り口
「うちも新たな価値提案をして購入機会を増やしたい」「リブランディングしたい」と思った方が、どうやって見つけたらいいんだ?と迷うこともあるでしょう。
『ブランディングの科学 新市場開拓篇 -エビデンスに基づいたブランド成長の新法則-』共著者のJenni Romaniuk氏はW’sフレームワークを推奨しており、とても参考になります。
・Why(目的は?)
・When(いつ使うのか?)
・Where(どこで使うのか?)
・While(カテゴリーを利用する前、あるいは利用した後に何をしているか?)
・with/for What(他に同時にどんなカテゴリを利用するか? 代用品は?)
・with/for Whom(誰のために? 誰と一緒にいるときに?)
・How feeling(どのような感情を感じたときか)
上記のような観点を持ちながら、現在持ち合わせている消費者理解の知見に照らし合わせてあり出してみたり、他にも検索データ、SNS上のクチコミ、社内データなどからカテゴリーエントリーポイントの洗い出してみましょう。
「ああ、うちの商品ってこんな場面にもいいんですね」と、新しく気付くことですよね。
気付く方法はいろいろあると思いますが、その商品のヘビーユーザーやいわゆるオタクの方、愛用者へのインタビュー調査などもあります。
そういう方々は、すでにいろんな使い方をやっていたり、「こんな用途にも使ってます」というエピソードをもっていたりするんですよね。
なので、そういう人たちの話を聞く、インタビューするっていうのはやっぱりよくある方法ですよね。SNSでエゴサーチをして、ユーザーの声(クチコミ)を拾って、そこから発想することもできますよね。
要は、ブランド側とかその企業側すらまだ知らない、その商品の使い方って、実はユーザーの方が試行錯誤して発掘してることが全然あるんですよね。SNSで話題になることもありますよね。
ユーザーの声を元にするだけではなく、「自社としてこういう風なシーンでも使ってほしい」と企業側から発信する(そのシーンとの結びつきを強くする)のも有効です。
企業側が「いろいろ考えてみたら、この場面でも使ってもらえるんじゃないか」と、新たに価値を見出して、ユーザーに提案していくのも全然あり得ます。
注力カテゴリーエントリーポイントに沿った4P施策
注力するカテゴリーエントリーポイントが固まってきたら、それを施策へと落とし込んでいきましょう。
施策例)
・ソーシャルメディアのコミュニケーションをカテゴリーエントリーポイントに沿った投稿内容にする
・UGC創出施策をカテゴリーエントリーポイントに沿った文脈で企画する
・カテゴリーエントリーポイントの検索クエリに対してSEO記事を用意する
・カテゴリーエントリーポイントに沿ったプロダクトを開発する
プロダクト開発については、弊社事例ではありませんが、このような良い例があります。
事例)シャウエッセンの夜味ソーセージ:https://x.com/schauessen_nh/status/1840889368271339778
シャウエッセンは朝や昼の食べ物として一般的に認識されていたが、「夜に食べるもの」として新たにカテゴリーエントリーポイントを獲得するプロダクト開発と、コミュニケーションを実施。
事例)KIRINの無糖紅茶:https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2013/news2013012305.html
「おにぎりに合う飲み物と言えば」緑茶が一般的で紅茶は選ばれないものだった。
そこで「紅茶も合う」という新たなきっかけで、無糖紅茶でおにぎりにも合うことを訴求。
カテゴリーエントリーポイントの効果測定
施策後は、狙い通りにカテゴリーエントリーポイントとブランドの結びつきが強化されたかを測定します。
カテゴリーエントリーポイントとブランドを紐付けられたか、競合ブランドと比べてどうかなどの結びつきを定期的に調査することです。
セルフ型アンケート調査ツールなどもありますので、思ったよりハードルは高くありません。
具体的に知りたい方は、小川 貴史氏・山本 寛氏の共著の書籍『その決定に根拠はありますか? 確率思考でビジネスの成果を確実化するエビデンス・ベースド・マーケティング』がおすすめです。
https://www.amazon.co.jp/dp/4839981868
カテゴリーエントリーポイントの理解を深めたい方におすすめの本
・ブランディングの科学
https://www.amazon.co.jp/dp/4023316490
https://www.amazon.co.jp/dp/4023318825/
・未顧客理解
https://www.amazon.co.jp/dp/4296112694
・確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力
https://www.amazon.co.jp/dp/4041041422
まとめ
新しいカテゴリーエントリーポイントを見つけ、消費者に提案していくのは価値創造・価値提案の営みであり、非常に面白くやりがいがあります。
「へぇー、(自社ブランド名)ってそういう良さもあるのね!」
こんな風に消費者に思っていただけたら嬉しいですよね。新しいカテゴリーエントリーポイントを見つけ甲斐、コミュニケーション施策を頑張った甲斐があります。
そうして、数ある選択肢から自社ブランドを選んでもらって、喜んでいただけるのが最高の目的です。
しかしながら初めての挑戦であれば実行面ではつまづくこともあるかもしれません。
「SEOやインターネット広告やSNSに取り組んでいるが、頭打ちががきている。」
そんな場合は市場浸透率を上げていくための戦略を見直すタイミングかもしれません。
「〇〇なら△△(ブランド)」と何かのきっかけで思い出してもらうために、カテゴリーエントリーポイントを積極的に発掘し、ブランドと結びつける施策を実行していきましょう。
でも、実際にカテゴリーエントリーポイントを見つけて活用するのは簡単じゃないですよね。
そんなときは、スノードームに相談してください。
という弊社のカテゴリーエントリーポイントもご紹介して締めくくりたいと思います。





